壱~その男、永巳新八~

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セットしてあった時間から10分後に鳴るアラームが早く起きろと急かした。 新八もこんなことしていられないと慌ててベットから降りた。 カーテンを引くと眩しいほどの太陽が部屋に入ってきた。 その光を喜ぶかのように、部屋に掲げられている額縁がキラリと光った。 これは新八の得意分野“剣道”の功績である。 新八は小学校から道場に通い、高校生になった今は部活で毎日竹刀を振っている。 しかし、その額縁に納められている賞状にはどれも“準優勝”の文字。 突然ベットに置いてあったはずの携帯電話がするりとシーツを滑り落ち、すごい音を立てた。 「いひぃっ!!!」 その音に飛び上がる新八。 「なっなんだ…携帯が落っこちたのか…驚いた」 辺りをキョロキョロと見渡し、落ちた携帯を拾い上げ、恨めしそうに睨む。 「驚かすなよ…心臓に悪いじゃないか」 新八はそう、臆病なのだ。 新八の準優勝という功績もこれが関係していた。 決勝-… 新八は常連のようにその舞台に立っている。 しかし、いつも相手の気迫に負け、準優勝を常連のように貰っていた。 臆病、気迫、そして前に行く勇気がないことが生み出した結果だ。
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