壱~その男、永巳新八~

6/11
前へ
/24ページ
次へ
目の前に着陸した足音の持ち主は不恰好に降り立った。 「本当にお前は反射神経いいなぁ。でも俺の着陸は100点だろ?」 「んなわけないでしょ平八」 キリリとした目を細くし、不適に笑った。 「おはよう、我らのエース永巳新八くん」 「おはよ。その呼び方よしてくれない?お前も十分強いじゃないか」 新八よりも身長が高く、男前という言葉が似合うこの人物。 藤谷 平八郎だ。 平八郎と新八は中学校からの友達だ。 同じ剣道部に入っている。 証拠に、平八郎の手にも竹刀が握られている。 二人は学校への道のりを歩き出した。 「いつも大会ではお前の方が上だ。この前の試合もすごかったけどな」 「でも負けは負けさ」 「まぁな。お前があそこでビビんなかったら初優勝だったのにな」 「どうせ俺はビビりだよ」 平八郎も、新八の臆病さを知っていた。 優勝を狙えるはずの新八を、いつも歯がゆく思っていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加