壱~その男、永巳新八~

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「それはそうと総太、お前もう着替えてんのになんで道場にいかねぇんだ?」 跳ね回っていた平八郎が動きを停止させ、総太の顔を覗き込んだ。 「あぁ、これだよこれ」 バサバサと手に持っていた紙を揺らし、主張させた。 「新聞?」 「そう、新聞を毎朝読んでから道場に行ってるんだ。いつもみんなより早めに来て読んでいるんだ」 只でさえ新聞を読まない人が多いのに、わざわざ学校にまで新聞を持ってきて読む。 彼の知識への向上心が見受けられる。 総太が新聞を読む理由は、楽しいし知識が増えるから、だそうだ。 「やっぱり頭のいい奴がすることだな~新聞を読むなんて」 「何を言ってるんだよ。大人になったらもっとためになるんだよ」 「俺は漫画しか受けつけませ~ん」 平八郎の脱力した声に新八は肩を震わせていた。 「それはそうと、新八!」 総太が新聞を広げ、真ん中を指差した。 「この記事がなんかあるの?」 「いいからよく読んで」 指さされた記事はそんなに大きくはなかった。 真剣に読んでいなかったら見逃してしまいそうな大きさだが、記事は深刻だった。 「『剣道・初夏大会優勝者、吉田秋都君(16)が行方不明』」
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