セーナの異変とネスラの不思議

3/18
前へ
/40ページ
次へ
『何を言うんですか。その為に看病したんではないし。それに、動いても良いと言っても、腕の怪我はまだなんですから、まだ安静です。』 セーナにメモを見せた後、ネスラは少し考えてからまた書いた。 『それでも、旅に出ることは出来ます。』 淋しそうに見せるネスラに、セーナは微笑む。たぶん、彼女は、自分に出ていってほしくはないのだ。こんな山奥に、人がしょっちゅう来るとは思えない。それでも、自分は旅をしている人間で、そのことを知ったネスラは、自分を引き留める訳には行かないから、メモを見せたのだろう。嘘を吐けばわからなかったかも知れないのに。 「もう少し、世話になっても良いですか?」 そう聞いたセーナに、ネスラは嬉しそうに頷く。ただ、とセーナは続けた。 「俺に出来ることとかは、普通に手伝うので。頼ってください。」 そう言ってネスラの濃い茶色の目を見ると、ネスラは照れたようにはにかんで頷いた。 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 熱で殆ど動けなかったので、セーナは早速家の中を案内して貰った。ネスラ1人で住むには充分な広さだった。セーナは、ネスラとは、互いに踏み込んだ話はしてこなかった。聞いてはいけない気がしたからだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加