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ベッドに腰掛け、腕の包帯を巻き直す。怪我を見て、セーナは眉をしかめた。狼に噛まれた傷が、塞がらないのだ。そろそろ治る気配があっても良いのに、生々しく噛み跡が残っていた。また、気味が悪いことに、全く痛くないのだ。
(なんなんだ。)
手当てを終え、剣の訓練と手入れを軽くする。一通り終えると、セーナは眠りについた。
セーナはまた夢を見た。今度は、森の1部が丸く開けた雪原の真ん中に立っていた。前方には洞窟があり、そこには何かが蹲っている。近づくと、それは狼だった。セーナはそれが狼だと気付くと、短く呻いた。狼には嫌な思い出しかない。離れようとした時、狼がセーナを見た。そして起き上がる。身構えたセーナに、驚くことに、狼が話し掛けた。
「傷の具合はどうだ?旅の者よ。」
「は?狼が、喋った?」
呟くセーナに狼は頷く。
「私は狼だが精霊に近い者だ。」
「あ、ああ、精霊か。」
「驚かないな。精霊に会ったことがあるのか?」
「まあね。で?何で怪我のことを知ってる。」
精霊と知っても警戒を解かないセーナを気にせず狼は続ける。
「それは、あの日お前達を襲ったのが私だからだ。すまない。」
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