旅人が出会ったのは

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セーナは、ため息を吐き、傍にある木に寄り掛かり、ずるずると座りこんだ。灰色の空をぼんやりと見上げていると、突然耳元で、「誰か!」と女性の声が聞こえた。驚き立ち上がると、すぐに周りを見回す。少し先の方で、狼と人の姿が見えた。 その姿を確認すると、セーナは走りだした。走りながら腰にさした剣を抜く。 飛び掛かろうとする狼に向かい、剣を投げ付ける。剣に気付いた狼はギリギリで止まり、剣は人と狼の間の木に突き刺さった。 人と狼は、セーナの方を同時に見た。人の方は固まっていたが、狼はすぐにセーナに向かってきた。剣を投げてから、すぐに短剣を取り出していたセーナは、速度を緩めず構え、そのまま狼に突き刺そうとした。 すると、またすぐ近くで、「殺さないで!」と声がした。2度目の不思議な声と言葉に、セーナの動きが鈍くなった。そこを狼は見逃さず、横に飛び退き、そこからセーナの喉めがけ飛び掛かった。とっさに左腕を挙げると、鋭い痛みが走り、セーナは顔をしかめる。思い切り腕を横に振ると、狼はすぐに離れ、距離を取った。 数秒睨み合っていると、狼は、何故か向きを変え、森の奥に走り去った。
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