旅人が出会ったのは

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壁にもたれかかり目をつぶる。また意識が遠くなりそうになった時、部屋の扉が開く音がした。横目で扉を見ると、洗面器を抱えた腕が見えた。視線を上に持っていくと、倒れる前に見た深緑の髪と、驚いた女性の顔が見える。 (目は深い茶色なのか。) セーナがぼんやりと思っていると、女性は驚いている顔から怒った顔になり、つかつかとセーナに近寄ると、机に洗面器を置いた。そして、セーナの肩を掴み、ベッドに押しつけた。急なことに驚き、されるがままになる。女性は、素早く毛布を掛け直すと、洗面器から布を取出し、水を絞りセーナの額に乗せた。冷たい布が気持ち良く、セーナはそこで自分が熱があることに気付いた。女性は、床に落ちた布を拾っていた。その女性に礼を言う。声を久しぶりに出した気がした。熱の所為で擦れていた。 「すみません。ありがとうございます。」 女性は、にっこりと笑うと、走って部屋を出ていき、すぐに椅子とメモ帳とペンを持ってきた。そして椅子に座るとさらさらとメモ帳に何か書き、セーナに見せた。 『いいえ。お礼を言うのはこちらの方です。狼から守ってくれてありがとうございました。何か、食べますか?』
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