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(口が、きけないのか。)
セーナはそう思ったが、そのことには触れず、水を頼んだ。女性は頷くと、また走って今度は水を持ってきた。セーナは起き上がり受け取ると、一気に飲み干す。女性が水差しを指差して首を傾げる。セーナは笑顔で首を振った。女性も笑顔で頷くと、水差しとコップを机に置き、またメモ帳に書きセーナに見せた。
『私の名前はネスラ・ノールです。あなたは?』
「俺は、セーナ・ソルガです。」
『ソルガさん、あなたは自分でわかると思いますが、熱と怪我がひどいです。そして、あなたは私の命の恩人です。なので、治るまで私の家で休んでいってください。』
ネスラの書いた文を読み、セーナはネスラの言葉に甘えることにした。今の状態で外に出るのは危険だと考えなくともわかる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。お世話になります。」
ネスラはまたにっこり笑った。
『それじゃあ、また寝てください。とりあえず夕飯になったら様子を見に来るので。あと、何かあったらすぐ呼んでください。』
セーナが頷くと、ネスラは椅子と水差し一式をそのままにして、洗面器だけ持って部屋から出ていった。セーナは横になり枕元に置いていた布を額に乗せ目を閉じた。
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