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「本当に欲しいものは簡単にプレゼントなんかで与えるべきじゃないのよ」
私はコーヒーを一口飲んでからクールを装って言った。
「でも、今回は特別なのよ。だってカズマの二十歳の誕生日なんだし」
「二十歳だからこそよ。二十歳と言えば成人なのよ。自分の力で道を切り開いていかなければならい年齢だわ。その大事な区切りの機会に欲しいものをポーンと与えられたりしたら、カズマが人としてダメになっちゃう」
靖子は困ったような顔をしてうつむいた。
私は嬉しくなった。
プレゼントを諦めさせることができる。
ほっとしてコーヒーを啜っていると、靖子が顔をあげた。
「美砂の言うことはいつも正しいわ。わかってる、プレゼントはカズマのためにならないかもしれない。だけど、それでもどうしても今回だけは我が儘を貫きたい。カズマにプレゼントしたいのよ」
私はイライラした。靖子がカズマに気持ちを伝える覚悟だということが真剣な表情から読み取れたからだ。
イラ立つ奥歯を噛み締めなが私は無理に微笑み、諭すように言った。
「やめておきなさい。第一、1ヶ月で60万もの大金を得られるようなアルバイトなんてありゃしないわ」
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