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「何も特別なことだけが素晴らしいわけじゃないのよ。たわいない日常の中で誕生日を迎えられる喜びって、何より素敵だと思うわ」
私はもっともらしい言葉を羅列し、必死になって説得したが、靖子は浮かばない顔でぼんやりしているばかりだった。
「でも、今年は特別なのよ」
靖子は言った。
「だから、特別なことが素晴らしいわけじゃないって言ってるじゃない」
私は余裕ぶって微笑みながら言った。
靖子は真っ直ぐ私を見つめた。
「特別なのよ。カズマが」
「え?」
「カズマが好きなの」
私はいつものようにクールに微笑むことができなかった。
恐れていた自体。
必死で動揺を隠そうと紙コップに残っていたコーヒーを飲み干すと唇ガタガタ震えた。
震える唇を無理に曲げて笑い顔を作り
「わかってたわよ」と言った。
靖子は私を見ている。
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