プロローグ

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私は死んだ男のその安らかな顔を見ながら安堵して座り込んだ。 灰まみれの缶の中から男が最期に吸ったセブンスターの吸い殻を取り出し、火を点けて吸い込む。 この煙草を吸い終えたら私は逃げなくてはならない。 家族も友達も戸籍さえも捨てて。 だけど私は寂しくない。男の最期の顔を知っているのだから。 大丈夫。 きっと私は逃げきれるだろう。 白い煙を目で追いながら、私は自分の殺した男が天国に登っていく姿を思い描いた。
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