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カズマの誕生日の1ヶ月前のこと。 朝っぱらから突然の休講があり、カズマはへそを曲げた。 「この雨の中、わざわざ出てきてやったのにやってられねー。あーあやる気なくした」 外には六月の静かな雨が降っている。 ふてたような顔で傘をさし、カズマは帰ってしまった。 午後からの講義にも出席する気をなくしたらしい。 彼はワガママだった。 自分の思い通りにならないところがあれば、すぐに表情に出し怒ったり拗ねたりする。 一方で嬉しいことがあれば子供のようにはしゃぐ男だった。 私はそのワガママさ、素直さに惹かれていた。 自分を押し殺してクールでサバサバした女を演じている私には、彼がなんのうねりもない真っ直ぐなもののように見えたのだ。
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