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夕食を食べ終えた俺は、囲炉裏を前にして座っていた。横で寝ているシャオに毛布をかけ、それから自分も毛布を羽織った。
昼間の暑さに反して、夜はとても冷える。
俺は囲炉裏の火に手をかざしていた。
「リオバよ。今日はどんな話をしてほしいのじゃ?」
向かいに座って同じく手をかざしているチグ婆が目を向けないで話し掛けてくる。
「へー。今日は話をする気分なんだ?珍しいな」
俺が意地悪そうに言うと、チグ婆は独特なしゃがれ声で笑った。
「かっかっかっ。リオバは冗談が上手いわい。……今日は気分がいいからのぅ。婆の戯言でいいなら聞かせてやろうと思ってな」
チグ婆は火鉢で消えかけていた炭を突いて、再び火をおこした。
突然だが、チグ婆は物知りだ。
昔は偉い学者で、色々な国を飛び回っていたらしいが、退職してからは細々と母国で暮らしていたのだという。
そして皮肉にも母国とはこの国で、退職暮しを楽しんでいた矢先に、内紛に巻き込まれてしまったらしい。
……まぁ、本人は「母国の内紛に巻き込まれるなら本望じゃ」と、言っていたが。
……っと、話がズレた。とにかくチグ婆は物知りで、それで俺は、そのチグ婆から昔回った国の話やらなんやらを聞くのが、とても楽しみだった。
唯一の娯楽と言ってもいいのではないだろうか?
「ほれ。どんな話がいいか言ってみい」
チグ婆が俺をそう言って急かす。
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