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ミラノは思わず目を背けたくなる光景だった。
──パンッ!!
ゼノスの横っ面は思いっ切り叩かれる。
──パンッ!!
今度は逆の頬を叩かれた。
ゼノスを叩いた少女は、痛そうに顔を歪めるゼノスを冷ややかな目で見ると、体を回転してゼノスの急所に蹴りが炸裂する。
「◎%#☆£&%!!」
言葉にならない悲鳴が森中へと響き、必殺の一撃を受けたかのようにゼノスが、地面に崩れ落ちてふれ伏した。
爛々と研ぎ澄ました双眸をした少女は、ゼノスに向け一言。
「……遅いわよ!!」
時は少し前に遡る。
あの後、鬼気迫るゼノスの来て欲しいという頼みに、仕方なく了解したミラノはついて行くことにする。
森の中を歩いて十分。ミラノが案内されたところは、真っ青な空から降り注ぐ太陽の光が、木々の間にたくさん差し込むところだった。
ルビーのように鮮やかな緋色の髪をした少女が、つまらなそうに頬を膨らませて岩の上に座っていた。
「よう……リゼル」
ゼノスの声が、なぜかびくついていることにミラノは気付く。
ふと、ゼノスの方を見てみると、巨大な力をもつ者が前に現れた時のように、額に汗をかきながらおびえた子供みたく、顔がひきついていた。
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