◇第一章 始まり◇

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ミラノは思わず目を背けたくなる光景だった。 ──パンッ!! ゼノスの横っ面は思いっ切り叩かれる。 ──パンッ!! 今度は逆の頬を叩かれた。 ゼノスを叩いた少女は、痛そうに顔を歪めるゼノスを冷ややかな目で見ると、体を回転してゼノスの急所に蹴りが炸裂する。 「◎%#☆£&%!!」 言葉にならない悲鳴が森中へと響き、必殺の一撃を受けたかのようにゼノスが、地面に崩れ落ちてふれ伏した。 爛々と研ぎ澄ました双眸をした少女は、ゼノスに向け一言。 「……遅いわよ!!」 時は少し前に遡る。 あの後、鬼気迫るゼノスの来て欲しいという頼みに、仕方なく了解したミラノはついて行くことにする。 森の中を歩いて十分。ミラノが案内されたところは、真っ青な空から降り注ぐ太陽の光が、木々の間にたくさん差し込むところだった。 ルビーのように鮮やかな緋色の髪をした少女が、つまらなそうに頬を膨らませて岩の上に座っていた。 「よう……リゼル」 ゼノスの声が、なぜかびくついていることにミラノは気付く。 ふと、ゼノスの方を見てみると、巨大な力をもつ者が前に現れた時のように、額に汗をかきながらおびえた子供みたく、顔がひきついていた。
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