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──ゴゴゴゴゴゴッ!!
三人が中に入ると後方から、再び門の扉を閉める音が聞こえてくる。
ミラノは一度立ち止まって後ろを振り向き、扉が閉まるのを確認すると、再び前方の広大なる敷地を見て、息を呑んだ。
夕日が暮れ、目の前にある光景は紅く染まっていたが、まさに絶景といえるものであった。
敷地内の中心には巨大な噴水が置かれており、夕日の光に反射して噴水の水が、紅く輝きながら宙を舞ってこぼれ落ちている。噴水の水が周りにかかり、至る所にある芝生が青々と輝いている。
ルベリア魔法学園の入り口の階段の両脇にある花壇の花には、色とりどりにたくさん咲かれており、そよ風に吹かれて気持ちよさそうに体を動かしていた。
「……あっ」
小さな声を出したのはリゼル。
噴水の近くにあった木で作られているベンチの上に、一匹の白い子猫が体を丸ませている。
リゼルはミラノたちを置いて噴水の方へ移動した。
「……かわいい」
ベンチに近付くと、リゼルはしゃがみこんで子猫を覗く。
人の気配に気づいたのか、大きな瞳を開けて子猫は顔を上げ、リゼルの方を向いた。
子猫の体は真っ白だったが、額の部分に月の模様を形作るようにそこだけ黒かった。
「うふふ……起こしちゃったかな? ごめんね?」
よしよしと子猫の頭を撫でるリゼル。子猫は気持ちよさそうに目を細めていた。
「あいつは動物が好きなんだよ」
リゼルの後を歩いて追いながら、ゼノスはミラノに説明する。
子猫はリゼルの後ろに付いて来た二人を見ると、
「にゃ~」
と鳴いて、立ち上ってベンチから飛び降り、どこかへと歩き去ってしまった。
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