◇第一章 始まり◇

5/28
前へ
/132ページ
次へ
ミラノは刀を音がする方向に構え、何が来るのか木々の間に目を凝らして見る。 すると、百メートル先の方から、一人の少年が木々の間を縫うように走っている。その少年の後ろには、二メートルも高さがあろう魔獸が、少年を追いかけているのがミラノの瞳に映った。 (魔獸──ビッグタイガーか) 少年はまだこちらに気付いていない。ミラノは少年を助けるために駆け始めた。 「伏せて!!」 ミラノの声に気付いたのか、青年は無我夢中で倒れるように地に伏せようとする。 ──刹那。青年の髪の上をすれすれに刀の刃が滑るように通り、ビッグタイガーに目掛け刀で斬りつけた。が、その前にビッグタイガーは驚異的な瞬発力で、後ろへと跳躍する。 ビッグタイガーがいたところに、円を描くような一閃が通った。 「……グルルルル」 ビッグタイガーは低い唸り声をして、ミラノの方を睨む。ミラノも同様に、氷のような目つきでビッグタイガーを睨んでいた。 やがて、ビッグタイガーは動じないミラノを見て、何かを悟ったのか体をひるがえして森の中へと消えた。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

610人が本棚に入れています
本棚に追加