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「……大丈夫?」
ビッグタイガーが視界から消えると、ミラノは倒れているゼノスに手を差しのべる。
「助かった、のか」
ゼノスはその手を握り、起き上がった。
「……森の中に入るなら、ちゃんと身を守るものを持っていた方がいいよそうじゃなきゃ、さっきみたいに魔獸に襲われるかもしれないから」
ミラノはそう言って目をつむる。
すると右手に持つ刀が光り、光りが消える頃には指輪に戻っていた。
「いや、一応持ってたんだけどなぁ」
ゼノスはほっと一息をつきながら、倒れた際に服に付いた土を手で軽く叩く。
「どういうこと? 持ってなかったじゃないか」
「……そうだな、一緒に妹がいるところまでついて来てくれないか? お礼もしたいしさ」
「遠慮するよ。僕はこれからディーゼルに行くからね」
ミラノがそう言うと、ゼノスは顔を輝かした。
「本当か!? 俺たちもこれからディーゼルに行くつもりだったんだよ」
「へぇ……その手は何?」
ミラノがそう言う理由──ゼノスはミラノの腕を取ったからだ。
「よし、じゃあ妹のところに行こう!!」
「──えっ?」
そう言って、腕を引っ張りながらずかずかと森の中を突き進むゼノス。
「ちょっと待ってよ!! 何で行かないと行けないのさ」
「あっ、俺の名前はゼノスっていうんだ」
「僕はミラノ……じゃなくて、一人で行けばいいだろ!!」
ミラノは手を振り解こうとすると、ゼノスは突然立ち止まってミラノの方を向き、頭を下げて──
「……俺を助けると思ってきて下さい!!」
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