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赤子
運命の幕は引かれ杯は掲げられん
「世界に鍵を掛けましょう」
「真実を小舟に乗せて」
「母なる海へと帰しましょう」
「優しい嘘を」
「貴女の胸に帰しましょう」
仮面で隠した青白く醜い顔の女神
溢れる赤は指先から少女の唇へ
「世界に別れを告げましょう」
「現実の代わりに夢を」
「真実の代わりに幻を」
「優しい愛を」
「母なる大地に抱かれましょう」
薔薇色の唇は今や青ざめ
ただ瞳が揺れている
呼吸を忘れた喉にその言葉は辛く
サヨナラは奥歯で噛み締めた
祝杯
乾杯
喝采
仮面に落ちるのは
ひたすらに無色の涙
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