653人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
ふと、彼の跳ぶ番になった。
クラスから歓声が上がる。
あぁ、やっぱり人気者なんだ
彼が走る様は、まるで野生のチーターみたいだった。
猛々しくしなやかで、美しい…
彼がハードルを越える度に、私は心の中で、跳べ!と叫ぶ。
跳べ!…と、何回も、何回も…
私の代わりに跳んでほしい。
この重たい身体を、宙に浮かべてほしい…
そんなことを思いながら、私は自分のコンプレックスの昇華を、彼に委託するのだ。
英単語の羅列を見て、文法を見て…記憶する私。
それしかできない自分に苛つきを覚えながら、チャイムと同時に教科書を閉じた。
校庭からは、歓声があがっていた。
最初のコメントを投稿しよう!