思い出

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それ以来千咲は陸上部に入部して長距離選手になった彼をいつも見つめるようになっていた。 自分の所属する手芸部の教室からだと校庭を見渡せるのだ。 もともと何かを作るのが好きで入部した手芸部だけど、校庭が一望出来るこの場所は千咲にとって一番のお気に入りになった。 走っていく影が長くなる秋。 吐く息が白く染まる冬。 初めて会った桜の咲き乱れる春。 そして彼を好きだと気付いた暑い夏の終わり。 そうやっていくつもの季節が過ぎていく中、彼と同じクラスになる事はもうなかった。 すれ違う時に挨拶を交わす程度の付き合いになり、部活も違う千咲には接点がなくなった。
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