思い出

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2人の関係に進展がないまま千咲も3年になった。 陸上部として最後の大会に出場する横山君にどうしても一言伝えたくて下駄箱で待っていた。 挨拶位しか出来ない私が言っていい言葉だろうか…と随分悩んだものの、やはりどうしても伝えたいという想いが強かった。 しかしあれこれ考え「やっぱりやめようかな…」など思っていると、ユニフォーム姿の横山君が一人で下駄箱にやってきた。 顔は汗だくで運動するには辛い時期だと感じさせる。 待っていた自分ですら汗をかく7月だ。 そんな姿をみて気圧されてしまった千咲だが思いっきって声を出す。 「…横山君!」 「…あっ…臼井さん…?」 こんな所にいた千咲に困惑しているようにも見えたが、もう迷惑ついでだとばかりに言葉を続ける。 「大会頑張って。横山君が人一倍努力しているの知っているから…。後悔しないように走ってきて!」 ドキドキし過ぎていて、きちんと言葉になっていたか不安になる。
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