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「…………えっと、俺の願い事を本当に何でも叶えてくれんの?」
「うん、出来る限りの願い事なら……何でも叶えられるよ?」
何故疑問系を疑問系で返すんだろうか。話がこじれるじゃないか。
それにしても、いきなり欲しい物って言われてもそう簡単に思いつかんな。
金には別に困ってないし、欲しいのは…………あるっちゃあるが絶対無理だし。
「…………願い事決まった?」
「ちょ、聞くの早過ぎじゃない!? も、もうちょっとだけ待ってくれ……」
何でも叶えてくれるって事は……俺の彼女になってくれって言ったらなってくれるのか?
…………いや、頼まないけどさ。ちょっと思っただけ、いや本当に。
「…………一応決まったけど、確認したい事があるんだけど良いかな?」
「良いけど……何?」
「毎日は流石に無いだろいし…………あのさ、君っていつもここで吹いてるの?」
「……何を?」
質問の意味が分からないらしく、きょとんとした顔で可愛く首を傾げながら俺に尋ね返してきた。あぁ、仕草の一つ一つが凄い可愛くて――ってなんか間違ってるぞ俺。
「それだよそれ。トランペットの事だよ」
そう言いながら彼女が持っているトランペットを指さす。
てかこの場で吹くものと言えば彼女が持っているトランペットしか無いわけなんだが…………天然か? 天然なのか!?
「……このトランペットならあげないよ? これはボクの大切な…………」
ギュッとトランペットを大切そうに抱き締め、再び顔を憂いに染める彼女。そのトランペットはよほど大事な物なんだろうか。
目を凝らしてよく見れば、ベルの所に天使の羽のレリーフが入っている。
あれは確か……セレブ御用達高級楽器『エンジェル・トーン】』だったか。
最低でも一千万円はくだらない代物で、かなりの富豪じゃなきゃ無理だったはず。
でも大事そうにしてるのは高いのが理由じゃないような…………まぁ、俺の願いは違うから別にいいけど。
「いや、トランペットが欲しわけじゃないんだ。気になるとは思うけど俺の質問に答えてくれないか?」
「………………」
先ほどよりも優しく聞いたつもりだが、なんか逆に怪しまれてしまった。
視線がかなり痛いし、背中から嫌な汗がじんわり滲み出てきた。
…………さっさと切り上げよう。
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