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幼い頃、ずっと見ていた夢があった。
丘の上に一本の桜の木。
その横にはすみれ色の長い髪を風になびかせ立っているひとりの女性。
彼女を遠くから見ている訳じゃない。
彼女の目が自分の目…
彼女の目を通して見る景色はとても綺麗だった。
音が全くない世界…
それでも、風の音が聞こえてくるようだった。
彼女は桜に手を当てる。
彼女の手から伝わる不思議な感覚…
桜の鼓動だ
強い風が吹き、桜の花びらが舞い上がる。
いつもはここで目を覚ましていた。
でも、今は違う…
強い風と共に声が聞こえた気がした。
自分の耳には届いていないが、彼女の耳には届いている。
遠くの方からこちらに向かって歩いてくるひとりの男。
その人が見えただけでとても暖かい気持ちになる。
彼女にとって、とても大切な人…
顔が見える距離まで来るが、顔を見る前に夢から覚めてしまう。
ここ数ヶ月の間、またこの夢を見るようになっていた。
高校に合格してからは頻繁に見るようになっていた。
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