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オレンジの光が差し込んでいる教室の隅で二人の男が窓に背を向けて話していた。 「蒼北…?陸上は!?陸上は辞めるのか!?」 「辞めるよ。あの学校陸上部ないし、勉強についていけなくなったら終わりだしね」 「お前がついてけなくなるわけないよ。全国大会で優勝したのに勿体ない…」 「仕方ないよ…陸上は中学までの約束だから」 「約束だからって自分の才能潰す気か?」 「部に入らなくても、走る事は出来るよ。それに、おれには医者になるっていう将来を与えられてる」 「将来は与えられるものじゃないよ。自分で見つけるものだ」 「一般的にはそうかもしれないけど、うちは違うから」 「はぁ~、宮内総合病院の長男は大変だね…俺なら耐えられないよ」 「自分で決めた道で悶えるか、決められた道で悶えるか…ただそれだけの違いだよ。それに、別な理由もあるしね…」 「別な理由…?なに?」 「色々。さぁ、帰ろう」 そう言って背中を押し教室を出て行く。 これからは決められた道を屈折しないように、ただただ歩いて行くだけ。 それが、家族のためなのだから…  
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