213人が本棚に入れています
本棚に追加
言われた通りに、柳生から履いてきた草鞋の紐を解き、足を水に浸ける。
軽く旅の埃を洗い落とすと、傍らに置いてあった手拭いで水気を拭った。
お栄さんが言った通りに縁側へと足を運ぶ。
暫く待つと、お栄さんは2人分のお茶を持って縁側に来て、私と向かい合うように座った。
つい、と私にお茶を出しながら口を開いた。
「で、お祐さん…は何故試衛館へ?」
「月真尼様に用事があるのですが、庵の正確な場所がわからないので…。」
お茶をすするお栄さんに答える。
「そうすると、お前さんは月真尼様の身内かい。」
疑問系でなく、断言するようにお栄さんは言った。
月真尼様は父上の血縁で、父様の血縁ではない。
私とは血が繋がってはいるが、今では正式な物ではなかった。
それでも、家を出るのに月真尼様の下を選んだのは、月真尼様が私と血縁だから。
「はい、私の叔母に当たります。」
.
最初のコメントを投稿しよう!