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今度は宏の腹部にクリーンヒットした。 「ゲホッウ!」 雪玉の中には氷の塊が入っていた。 「ウッシャー!」 神宮寺はガッツポーズを決める。 「ゲホッ、ゲホッ、ところで大丈夫なの?」 苦しさを堪えながら宏は聞いた。 「はっ? 何が? てか、さっき真っ白い顔した気味悪かった男ここ通らなかった?」 「一応男の子なら、あっちに行ったけど……。 車に乗って」 「そう」 神宮寺は俯き寂しそうな顔をした。 「わかったわ。 さっ、帰るわよ」 しかし、神宮寺はいつもの明るい顔にすぐに切り替えて施設へ帰る一歩を踏み出した。 「ちょっと、待ってよ」 その後を宏が追う。 雪はしんしんと降り積もる。 だが、曇り空の合間からは微かに夕陽が顔を覗かせていた。
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