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神宮寺は授業中いきなり呼び出された。 暖い職員室では担任が神妙な面持ちで神宮寺を迎え入れた。 若い女の教師は神宮寺の手を強く握り締めて、真正面から神宮寺と向き合った。 「神宮寺さん、落ち着いてよく聞いて下さい。 あなたのお母さんがお亡くなりになられました」 刹那、虚無が一息に膨張し、神宮寺は現実と空想の狭間に浮かんだ。 その後担任は、母さんが亡くなった経緯を一言一言神宮寺の目をしっかりと見ながら伝えたが、神宮寺はこのことをはっきりとは覚えていなかった。 ただ、母さんが病気になっても無理を押して働き続け、最後は過労死してしまったということを説明してくれたというのは、ぼんやりとわかった。 話を聞いている間にも、心の中の柱が音をたてて折れ、今まであった寂しさ、恋しさ、切なさ、不安、恐怖が一挙に降り注いだ。
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