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雪は無く、さかのぼっていた記憶は消えた。
茜色の空は雲一つ亡く、澄み渡っている。
「それって、告白ぅ?」
成長した風の女神は笑った。
宏は首を横に振る。
「オレだけじゃない。
神谷も、空も、影山だって、部長を残して消えたりしないよ。
誰一人、欠けたりしない」
宏は言った。
神宮寺は立ち上がり、宏の前に背中を向けて立つ。
「当たり前でしょ!
さっ、早く帰るわよ」
少し湿っぽい声だったが、その声にはいつもよりもさらに暖い風が吹いた。
神谷宅
もやもやとした気分のままただひたすらに足を動かした。
初めて見た空の怒った顔。
呼び掛ける間もなく走り去った時にちらりと見えた淋しそうな横顔。
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