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「さてと。どうやら逃げ切ったみたいですし…どうしましょうかねぇ。とりあえず、甘味処にでも―ん?」
ぼうっと呟きながら豊玉発句集を捲っていた沖田の手が止まった。
「こんなページ…ありましたっけ?」
そのページとは、一番最後にあったページの事である。
なぜか、赤い…
「土方さんも悪趣味だなぁ。何々?
゛廻れ廻れ歯車よ時を渡れ゛
なんだ、これ。土方さんらしくも…っ。うわっ!!」
突然、沖田の持っていたものが光を放ち始めた。そして、自身が吸い込まれようとしている。
(そんなわけには行かないっ!)
咄嗟に、沖田は土方の名を呼んだ。
「ひっ、土方さん!!助けてくださいっ!!!!」
だが、土方は冗談だと思ったのか、沖田の元には来なかった。もう、がむしゃらに名を呼び始めた。
「近藤さん!平助!斎藤さんっ!!」
ようやく声が届いたのか、名を呼ばれた者は、急ぎ足で声が聞こえる場所へと向かった。
だが
もう誰かが来た時には既に遅く、その場所には豊玉発句集しか置いていなかった。
そして、あのページだけは、抜き取られていた。
取り残された近藤達は、その場にただ呆然と立ち尽くしていた。
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