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「よお、お疲れさん
ずいぶん遅いご帰宅だな」
オルゴールを鳴らしながら歩いていると、正面から声がした。
「え?」
ふと前を見ると、
私の自宅から数メートルの場所に彼は壁にもたれかかりながら腕を組んでいた。
「いきなり現れるからびっくりしたよ、どうしたの?こんな遅くに」
私は足早に彼の元へ駆け寄りながらも、驚いた表情を隠しきれずにいた。
そんな私の表情を見て彼は微笑みを浮かべたまま腕を組んでいた。
「どうしたのって、お前が終わるのを待ってたんだよ
塾で疲れてるだろうから、元気付けのために驚かしてやろうと思ってさ、
あえて返信しなかったんだ、ごめんな」
私は目を丸くして彼の言葉を聞いていた。
「ぷっ、あはは、何それー
そのためにわざわざここでずっと待ってたの?
完全に不審者じゃん」
彼のささやかな思いやりに私は思わず笑ってしまった。
私が勉強サボっていたばっかりに、一方的に彼からの誘いを断り、突然しばらく会えなくなると告げたことに対して罪悪感を感じていたため、
彼のくだらない気遣いにホッとしていた。
「お前の家すぐそこだけど、送って行ってやるよ」
私が一息ついていると、彼は優しくリードしてくれた。
「うん、ありがとう」
そう言われて彼と雑談をしながら自宅まで一緒に足を進めた。
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