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『はい、手筈通りに…』
黒いスーツ姿にサングラス…いかにもな感じの出で立ちのその男は携帯を閉じるとこれまた黒い鞄から黒い四角形の箱を取り出した。
ちなみに今の時刻はPM18時00分、貴史と清美がファミレスを出てから一時間位後だ。
男は取り出した箱の中央にある赤いボタンを押すと再び鞄に箱を収め人波の中へと消えて行った…
数分後…
凄まじい爆音が街に響いた…
先程迄清美と貴史が居たファミレスが爆破されたのだ。
この事件はすぐに報道され、貴史と清美はあの男の仕業だと感ずいた。
『私達に本気だと伝えたかったんでしょうね。』
比較的冷静な清美に対して貴史は激しく動揺していた。
『そんな事だけの為に…死人が出てるんだぞ…俺達があそこに行ったから…』
倒れ込む様に椅子に崩れ落ちる貴史をよそに清美は報道に見入っていた。
清美はこれ以上貴史に危害が加わる前にこの事件から手を引こうと考えていた。
しかしその決断をする前にこの事件が起きてしまった…
物的被害だけならKDSの総力を上げ復旧に努めるだけでいいだろうが失われた命は二度と戻る事は無い…
犯人は事件から手を引かせる為にファミレス爆破を行ったのだろうが、逆に清美は亡くなった人達の為にもなんとしてでも犯人を探し出し法の裁きを受けさせる事を誓っていた。
『笠木さん、貴史さ…いや、矢田社長をゲストルームで休ませてあげて下さい。』
『わかりました。社長、こちらへ…』
笠木は貴史に肩を貸すと会議室を後にした。
貴史の落ち込んでいる姿は見たく無いが今のところここで大人しくして貰っていた方が安全だ。
『伊藤さん、明日よりこの本社ビルのセキュリティを完璧にして下さい。社員以外の者を一切ビル内部に入れない様にして下さい。』
清美は契約、商談等も社内以外で行う様に付け足した。
『お嬢様…しかしそれでは…』
『やりなさい。』
清美の凛とした態度に伊藤は黙って頷く事しか出来なかった。
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