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貴史がビルを出て行く数時間前。
『今日本に入りました。今後の指示をお願いします。』
空港を出てすぐにその人物は上司に電話をかけた。
『君が日本に入るちょっと前にまた爆発事件が起きた。先ずはそっちから洗ってみてくれ、日本警察が回収した防犯カメラの映像の一部を入手出来たので君のパソコンに送ってある。くれぐれもノアに気取られる事の無い様にな。』
上司らしき男は返事も聞かずに通話をきった。
まあいつもの事だ、言いたい事だけ言って苦労するのはいつも下っ端の私達だ。
携帯をポケットに押し込みその人物は空港内の喫茶店に入ると店内の隅のテーブル席に腰掛けた。
『ミルクティー。』
素早く注文を告げるとその人物はノートパソコンをテーブルに広げた。
確かにデータを一件受信している…
フォルダを開き映像を確認していく。
時刻はPM15時47分からか…
やはり爆破の影響で画質が頗る悪い…
その人物は胸ポケットから赤い縁の眼鏡を取り出すと、慣れた手つきで装着した。
『ファミレスか、またなんでこんな所を…』
一連の事件に触発された馬鹿の仕業か?
映像を早送りで見ていると16時を過ぎた辺りで違和感を覚えたその人物は少し巻き戻すと今度はスローで再生してみた。
『この男か…』
黒ずくめの男が一人にも拘わらずテーブルに腰掛けているのは少し違和感がある…
映像の男はテーブルの裏に手を伸ばすと数秒間動きが止まっていた。この時に爆弾を仕掛けたのだろう。
ん?後ろの子供と何か話してるみたいだな?
犯人の顔は画面では確認出来ないが、話している子供は画面正面に捉えている。
画面をズームにして子供の顔を自分の携帯に取り込むとパソコンのを手提げ鞄に直してミルクティーの到着を待った。
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