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貴史は全力で走った。
インドア派の貴史はそんなに体力がある訳では無いが、早く行かないと奴らの気が変わったら清美に危険が…
そう考えると力が湧いて来た。
愛の力は偉大だ!
何とか指定されたホテルの入口の自動ドアを抜けた所で貴史は急に力が抜けていった…
『タクシー使えばよかった…』
その場に崩れ落ちる貴史を遠くのソファーから見ていた女性はゆっくり立ち上がると貴史の背後に回った。
『矢田貴史君ね、振り向かずにこのままエレベーターに。』
携帯と肉声がほぼ同時に聞こえる。
間違いなく後ろに犯人の仲間が居る事を認識した貴史は指示通りゆっくりとエレベーターの前に歩いて行った。
『上のボタンを押して下さい。もし他の人が乗っていたらやり過ごしましょう。』
言われた通り上のボタンを押すとすぐに扉が開いた。中には誰もおらず、貴史は中に入ると女も入って来た。
彼女は携帯を切ると、
『17階を。』
とだけ言った。
17のボタンを押し、エレベーターが動き出したが女は声を掛けては来なかった。
すぐに17階に到達しゆっくりとドアが開く…
『ルームナンバーは1708よ。』
一部屋ずつルームナンバーを確認しながら歩いて行く。
あった、1708だ。
『このカードを。』
貴史の左後ろからカードが差し出されたのでそのカードを受け取り静かにドアを開け部屋に入った。
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