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一時間後…
あからさまに不機嫌な安倍ブラザーズに貴史は掛ける言葉が思い浮かばなかった。
『どうしたの?さ、遠慮なく食べちゃってよ♪』
目の前には恐らく肉じゃがと思われる物体があるが、三人は箸を持つ気になれなかった…
もし、箸を手に取ってしまえばこの物体を食べる意思があると思われてしまうからだ。
しかし、満面の笑みを浮かべこちらの動向を伺っている麻衣子から逃げ出す事は不可能だろう。
『どうしたの?』
『いや、いつも出前とかだから手料理って久しぶりだなと思って…』
貴史はもはやこれまでと覚悟を決め、箸に手を伸ばした…
次の瞬間、貴史の部屋のインターホンが鳴った。
誰だ?
何気なくインターホンの画面を覗き込むと…
伊藤?なぜKDSの伊藤がここに?
突然の出来事に何も考えられずにいると、再びインターホンが鳴る。
『ちょっと誰なの?まさか…浮気じゃないでしょうね』
!とにかくこの三人に合わせる訳にはいかない。
なんとかこの場をなんとかしなければ…
『いや、親戚のおじさんが来たみたい。あの人何時も突然なんだよ、これはおじさんと食べるから今日の所はいいかな?』
安倍ブラザーズは九死に一生を得たかの如く、喜び勇んで帰り支度を始めた。
麻衣子も相手が親戚ならしかたないと渋々帰り支度を始め、残さずに食べる様に何度も念を押して帰って行った…
しかし今さらなんの用事だ?
まさか逆恨み?
だとしたらあの三人を帰したのはまずかったが、復讐なら堂々とインターホンを鳴らしてくるとは考えにくい…
とにかく返事を返してみるか。
『KDSの伊藤さんですね?なんの用事ですか?』
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