~えっ…俺が?~

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伊藤の話しは会社の危機を救って欲しいというものだった。 先の事件で会社のイメージががた落ちし、今の幹部から社長を選出しても立て直しは難しいだろうと判断、前社長の娘である清美を担ぎ上げるしかないという事で会社の意見がまとまったらしい。 なぜ前社長の娘である清美が目を付けられたかというと、元々今のKDSはこの間の事件で逮捕された渡辺派と前社長の三島派に別れていたらしく、渡辺が三島を殺害した為三島派の社員達はやむなく渡辺に従っていたという事だった。 渡辺が逮捕され、渡辺派だった幹部達は次々と会社を去り三島派の勢力が強くなったのが理由のようだ。 『で、俺に清美を説得して欲しいという訳ですね。』 貴史は正直また面倒な事が起きたなとため息をついたが、伊藤の切羽詰まった表情に多少同情の念も抱いていた。 『はい、是非清美お嬢さんを説得して頂きたいのです。』 伊藤は貴史の言葉に勝手に協力してくれると勘違いし、更に詳しい説明を始めた… 『今、我社の株価は最低の一円です。この株を五百万株買えば筆頭株主になる事が出来ます、もちろんお金はこちらで用意しますのでその辺の心配は無用です。貴史さん、KDSの社運をお任せします。』 伊藤はそう言って席を立つと、貴史に向かい土下座をした… いくら会社の為とはいえ、大の大人が高校生に土下座するというのがどれほどの覚悟が必要か… 伊藤の行動に流石の貴史もこの願いを断る事は出来なかった。 『わかりました。伊藤さん、椅子に座って下さい。いますぐ座らないとこの話しはなかった事にしますよ?』 貴史がいい終わると伊藤はマッハ2位のスピードで瞬時に椅子に座っていた。 『…とにかく、清美には出来る限り説得してみますがすぐに答えを出す事は出来ないかもしれません、3日以内にKDS本社に連絡を入れますので待機しておいて下さい。』 貴史はそう言って席を立つと、喫茶店を後にした… 伊藤は貴史の姿が見えなくなるまで深々と頭を下げていた。
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