黒い糸

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力任せに押し切ると、白い騎士の顔面に散らばっていた本の一冊を目隠しにするように叩き付けるネロ。 『悪ぃな!』 白い騎士の延髄にレッドクイーンの峯を思い切り振り下ろすが、あっさりと防がれてしまう。 『!?』 間合いを取り、白い騎士の顔面を見ると本は張り付いたまま。 『兜を被っていれば視界が悪いのは当然。ゼロでもお構い無しか』 何度か白い騎士と打ち合い、あることにネロが気付いた。  白い騎士の甲冑に傷がついていないのだ。 『魔力に対して強化はしてあるだろうが、おかしいな……だったら!』 白い騎士の右脇に回り込むと、ランスを奪い、そのまま白い騎士に突き刺すネロ。 「悪く思うな。俺の方が上だっただけだよ」 軽く引いては、また突き刺す。スナップを利かせ、回転を加え、確実に葬る様に。  ネロが手を放すと、白い騎士は力無く床に倒れ込み、弾みで兜が外れ、ネロの足元へと転がってくる。 「中身が無い…鎧が悪魔に取り憑かれた?」 兜と鎧を交互に見ていると、光となってその場から消えた。 「嫌な予感…」 結果の良し悪しに関係無く、ネロの予感は良く当たる。既に充分過ぎる程悪いが、更に悪くなる。そう思うのだ。  溜め息を吐きつつ立ち上がると、部屋の片隅で隠し扉が開いた。
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