207人が本棚に入れています
本棚に追加
「はあ…はあ……」
体全体で息をする。そうでもしないと酸欠でしにそうだ。
「あ…ありがとうございました」
「いいよ、幼なじみのよしみだ」
「え!?」
少女、イリアが目を丸くして少年を見る。
「うそ…まさか……レイド?」
「久しぶり」
レイドがニッと笑いかけると、イリアが勢いよく抱き着いてきた。
「良かった…良かったよぉ……」
レイドの胸を涙で濡らすイリアが酷くもろいものに感じて、ソッと細い体を抱き締めた。
「でもどうやって逃げたの?」
泣き止んだイリアの率直な疑問。それにレイドはグッと親指を立てて答えた。
「忘れたか! 村一番の臆病者とは俺のことだ!!」
「あ……あははは…」
すごい理由だが納得するほかなかった。
レイドはかくれんぼや鬼ごっこで常に無敗。大人達は説教する時にまず探さなければならなくて、そして見つからないのだ。
「でも…無事なら会いにきてくれれば良かったのに」
「ごめん。騒がれるの嫌いだからさ…」
嘘だ。
イリアはすぐに気づいたが、理由を問いただそうとはしなかった。
(あんな事があったんだもん。何を恐れてもおかしくないよね)
「とりあえずどこかに隠れよう。さっきの奴が…」
その先の言葉を完全に失ってしまった。
街が…燃えていたから。
最初のコメントを投稿しよう!