207人が本棚に入れています
本棚に追加
「おらぁっ!! 血染の魔王様の参上だぁ!」
燃え盛る街を悠然と歩む人影。
その手には火炎銃が握られており、それを次々に家屋に撃ち込んでいく。
火炎銃とは最近開発された兵器で、発射した銃弾が空気摩擦で発火するという代物だ。
左手に火炎銃を持ち、右手に身の丈ほどの大剣を携えて炎を背景に歩くその姿は偽りといえど魔王と呼ぶに値する光景だった。
「出てこいクソガキ! イリア・ラングベッドを連れて来れば見逃してやってもいいぜ! 嘘だけどなぁ!! ハハハハハハッ!!」
命を踏みにじりながらゼクスは進む。
目的以外のものなどただのゴミとしか思っていない。そんな目だった。
そしてその狂気に満ちた目が狂喜に変わり、少女を捉えた。
「もうやめて!」
「だったら魔王の情報をよこせ!」
火炎銃が火を吹き、イリアの周りを炎が包む。
そんな中でもイリアの口の動きはハッキリと見えた。
「私は……魔王の姿を見ていません」
「ブチッ………このクソアマ───ッ!!」
怒りに身を任せたゼクスは片手で軽々と大剣を振り上げ、イリアに向けて振り下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!