握る剣~ツルギ~

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『血染(ちぞめ)の魔王』とは数年前に世界中の人々を震えあがらせた最強最悪最凶の大犯罪者。 村1つを血と炎で染め上げ、笑い続けた悪魔。 殲滅せんと警察、軍隊、賞金稼ぎが村に駆け込み、1人残らず斬殺された。 その中には当時世界政府でも最強の剣士とうたわれていた男もいたらしい。 生存者は1人の村人の少女。両親の死体の下で気絶していたのを発見された。 両親の死体が血染の魔王によるものでないことから、自殺して自分達の死体で娘を隠したのだろうと判断された。 まさか死体の下に人が隠されているとは思わないだろう。 あまりに残虐な惨状と親の命をかけた愛ゆえに事件は世界中に広まったのだ。 美しい親子愛の物語があり、犯人の残虐性が一層強調され、あらゆる人々が恐怖した。 全てを鮮血で染め上げる大魔王。 血染の魔王の名は歴史にすら刻まれ、数年たった今でも人々の恐怖の代名詞となっている。 「……まだ、血染の魔王は怖い…か」 号外を見ながら暗い顔で笑う少年。 「当たり前か…」 今なお血染の魔王が恐れられている理由は簡単。 未だ捕まっていないどころか、その後の行方が全くわかっていないのだ。 つまり、自分の後ろに立っていても何らおかしくはない、ということ。 今この瞬間に少年が住むこの街が血で染まることもあるということなのだ。 グシャッと紙を握り潰す。 (馬鹿馬鹿しい) もう何年も昔のことだ。 丸めた紙を地面に放り捨て、少年は歩き出す。 ドンッ! 「キャッ!?」
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