プロローグ

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――――ドタドタドタドタ… 複数の人間が龍乃のいる部屋へと入ってきた。 母親も父親も龍乃を守ろうと、龍乃と部屋に入ってきた者達との間に立ちはだかる。 「お前らいつまでその化け物を庇うつもりだ!」 「そんな化け物さっさと殺しちまった方がいいんだ!」 「俺の親父はそいつに殺されたんだぞ!お前らだってそうじゃねぇか?!」 それでも母親も父親も退こうとはしなかった。それどころか反論までする。 「この子は化け物なんかじゃないわ!この子とお父さんのお陰で今この村は在るのよ!?」 「そうだ。あんた達がお義父さんを村を救った英雄と呼ぶのならこの子だって英雄じゃないか?!」 退きもせず反論してくる両親に、相手は苛立ちを見せる。 「これ以上庇うようならお前らもただじゃおかねぇぞ」 リーダー格の男がドスを利かせて言うが、父親も母親も決して退けなかった。 「チッ。お前らのこと認めてたんだぜ?残念だよ」 そう言うと男は腰に帯びていた刀を抜き、父親と母親を切り付けた。 ゴトンッと父親の首が落ち、母親はその場に崩れるように倒れる。 「…パパ……ママ………?」 龍乃は倒れた両親に近づこうとする。 「龍乃…逃げなさい……」 「ママァ……」 光の加減によって青くも見える黒い瞳からぽろぽろと涙を流す龍乃に母親は、今度は強く言う。 「逃げなさい!双牙、早く!!」 その母親の頭を男は蹴り飛ばす。 すると母親の言葉を受けて、すぅっと真っ白な虎が現れた。 その大きさはせいぜい大型犬くらいだったが、男達は心底警戒する。 双牙は男達が自分を警戒している隙に、龍乃を自分の背に乗せ窓から飛び出した。 「何をしている!!早く追うんだ!」 ――――ドタドタドタドタ… リーダー格の男が怒鳴ると、入ってきた時と同じように部屋を出ていった。 「……双牙…龍乃をお願いね……」 取り残された母親は、父親の身体に近付き、そう言うとゆっくりと目を閉じ、二度と開くことはなかった。 そのまま双牙は夜の暗闇に紛れて村を出た。 追っ手に見つからないように。 追い付かれないように。 自分の背中で泣き疲れて眠っている、まだ六歳にもならない、小さな少女を守るために。
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