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1章 始まり
ガサガサッ、と生い茂った草むらを出ると、そこは小高い丘の上だった。
「ふぅ、久々の人里ねぇ」
一人の、まだ十六、十七くらいの少女と呼んで良いくらいの女が言う。
龍乃は長い黒髪を頭の高いところで一つに纏めている。結って垂らしている髪は腰の当たりまである。
短いワンピース状のトップスに、長くすっきりしたズボンを合わせている。そのどちらもが動きやすく、通気性の良いものだった。
そしてその腰の辺りには、二本の短刀。左右両方から取れるように背中で平行に取り付けられている。
丘の上からは小さな町が見えた。
本当に小さな町だ。町と言うには小さ過ぎるかもしれないが、村と呼ぶには少し大き過ぎる。
また、周りは山々に囲まれていて自然豊かで、町の中心に大きな広場があるのが見える。そこには空へと盛大に水を噴き出す噴水があった。
「うん。一ヶ月ぶりに満足いくご飯と暖かい布団を得られそうね」
龍乃はそう言うと、ルンルンと機嫌良く町に向かった。
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