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だいぶ長い時間をかけ一つ目の握り飯を食べ終えた椿は少しだけ『ふぅっ』っと息を吐き、小十郎が持っている二つ目の握り飯を見た。 一時握り飯を見つめた後、何かを決心して素早く握り飯をつかみ自分の口に押し込んだ。 ムグムグとさっきより早く口を動かし、急いで食べているように見えた。若干キツそうにも見えた小十郎は食べている途中の握り飯を椿の口から取り上げた。 握り飯を見ると口を早く動かしていた割には、一口ほどしか食べられていなかった。 『キツいんなら無理して食うなよ。逆に腹が苦しくて吐くぞ。無理だったら食うな!いいな??』 椿は少し戸惑ったがコクンと一回頷いた。 『よし、分かればいい!!』 そう言った小十郎は食べかけの握り飯をどうすることもできず、自分で食べることにした。 食べている間椿は月を眺めていた。 全て食べ終えた小十郎は一時椿と同じように月を見ていたが、まだ仕事があったので部屋に帰ることにした。 『椿、俺はまだ仕事が残っているから部屋に戻る。お前はどうする??寝るか??』 と聞いたが椿は首を横に振った。 『そうか。じゃあ眠たくなったら俺の部屋に来い。わかるだろ??来たら布団敷いてやるから、いいな??』 そう言うと一度だけ椿はうなずき小十郎の足から降り、さっきの木の上に飛び乗った。 木の上にいる椿を少し見て、小十郎は自分の部屋に戻っていった。 小十郎が戻ったことを確認した椿はまたさっきのように歌い出した。 歌は誰かに聞かれることなく、静かに流れ、消えていった。
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