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「そうか!桜君というのか!」
「…ちょっと待って下さいよ、近藤さん…“桜”って女性の名前じゃあ…」
「私が男に見えますか?」
三人はまじまじと“桜”の顔を見る。
美しい顔をしている…だが、男に見えない事も無い。
「…冗談はよせ」
「大真面目です」
「あーぁ、土方さん何やってんですか…」
呆れたような口調でそう言いつつも、沖田はどこか楽しそうだ。
「いや、こんなに強いのだから、男だろうと女だろうと私は構わないが?」
「しかし…近藤さん、此処は女人禁制だ」
「“訳あり”でも構わないと仰いましたよね?」
桜が間髪を容れずに反論する。
「武士に二言は無い筈ですよね、土方さん。私も問題無いと思いますけど…?強い人は好きですし」
沖田も相変わらずの笑顔で近藤に賛成する。
“武士”という単語をやけに強調させたように聞こえた。
「止むを得ん…。言い出したのは俺だ、今更約束を違えたりはしない」
仏頂面のまま、土方は承知した。
些か不安そうな顔の桜を見て、沖田は微笑んでそっと呟くように言う。
「大丈夫ですよ。この人元々こういう顔なんです」
見ていて下さい、と言って沖田は悪戯っぽく笑って見せる。
「それにしても…まさか、土方さんが男女の区別が出来ない人だったなんて…」
「総司ぃ…」
「因みに私は男ですからね、変な風に見たりしないように」
「総司ぃィ!!」
土方は青筋を立てて沖田を睨む。
「アハハ!!桜さん、この人が此処の鬼副長で、からかうと一番面白い人ですよ」
「…成程」
「――ハア…納得してんじゃねぇ」
疲れた様子の土方…無邪気に笑う沖田。
そして近藤はというと、優しい笑みを浮かべている。
まるで二人の父親だ。
そうだ、と土方は突然桜に向き直る。
「芹沢にはばれるな。何をされるか分からない…。勿論他の隊士にもだ。其処から奴の耳に入るかもしれない」
「あの…芹沢さんって…?」
「此処のもう一人の局長だよ」
近藤は少し困った様な笑みを浮かべて言った。
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