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そんな彼女と初めて話したのは、僕が彼女を初めて見てから1週間ほど経ったある日のことでした。
母が検査中で暇だった僕は本を読んでいました。
部屋には僕と彼女の2人しかいませんでしたが、話しかける勇気が僕にはなかったのです。
「…何を読んでいるのですか?」
読み始めてすぐのことでした。
彼女が話しかけてきたのです。
僕は内心喜びながらも、彼女の質問に答えました。
「ただのライトノベルだけど…読む?」
僕がそう言って本を彼女に差し出すと、彼女は少し嬉しそうに受け取ってパラパラと読み始めました。
それからしばらく、僕は彼女が本を読んでいるのを眺めていました。
病室の中で、白く細いその手がページをめくる様はとても綺麗で、とても悲しくて、僕は彼女に見入ってしまい時間が過ぎるのを忘れていました。
パタン、といきなり彼女は本を閉じ僕がしたように本を差し出しました。
「ありがとうございます」
笑顔で、感謝の言葉を添えて。
「え…もういいの?」
僕は思わず聞き返してしまいました。
僕が見た限りでは彼女は10ページ程しか読んでいません。
彼女は僕の問いに、はい、と答えるだけで理由を言ってはくれません。
何度か聞いてみましたが、結局その日はそれ以上進展はなく、別れる時も軽い会釈を交わしただけでした。
それでも、それからは少しずつ彼女と話をするようになりました。
母が検査の時だけでしたが、会話の回数は日に日に増えていったのです。
趣味や日常の出来事などとにかくいろいろなことを話しました。
ただ、ある時から気になり始めたことがあるのです。
それは彼女の家族のことでした。
彼女の言葉の中に家族の話が一度も出てこないので、思いきって聞いてみたこともありました。
しかし彼女は答えませんでした。
僕はそれ以上彼女に聞くことが出来ず、そのまま月日が過ぎていきました。
僕は毎日のように病院に行っていましたが、一度も彼女の家族が見舞いに来ることはありませんでした。
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