僕が君に、君が僕に渡せたモノ

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そしてある日、僕は初めて彼女の家族の話を聞くことができました。 その瞳は悲しげに潤んでいて、それは初めて彼女を見た時の瞳と同じ瞳でした。 とある街のとある家庭に、彼女は次女として生まれました。 小さい頃の彼女はとても幸せでした。 優しい家族に囲まれ、毎日を楽しく過ごしていたのです。 そんな日々が少しずつ壊れ始めたのは、彼女が中学生の時だったそうです。 彼女には頭がよく有名な進学校に通う姉がいます。 それに対して彼女は、姉とは正反対で成績が悪く、いつも下から数えてすぐのところにいたそうです。 彼女の両親はそれをよく思っていなかったらしく、彼女はいつも姉に比べられていました。 そうして彼女は段々とコンプレックスを抱くようになったそうです。 それから彼女は一生懸命勉強して、なんとか普通高校に進学することが出来ましたが状況は全く変わりませんでした。 それから何年か経って彼女の病気が発覚します。 その時既に家族内で邪魔者扱いをされていた彼女は、さらに邪魔者となります。 彼女が集中治療室でなく一般病棟に居たのもそういう理由があったからでした。 それ故に彼女の家族は一度も見舞いにくることがなかったのです。
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