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T女子校の放課後、校門から楽しそうに会話をしながら歩いてくる4人の女子高生。進学校のせいか服装に乱れのある生徒は見当たらない。
『ねぇ、洋子S校の男子に告ったんだって』
『やめてよ慶子恥ずかしいじゃない』
『これからその話しじっくり聞きにマックでも行かない?里沙もいいでしょ?』もう一人の少しぽちゃっとした絵美が言った。
『ごめん、今日バイトなんだ』
『じゃあ、3人で行ってくるね』
『明日ちゃんと報告してね、じゃ』
里沙はそう言って3人とは反対方向へ歩き出した。
(あ~ぁ、バイトじゃなかったらなぁ…)
少し残念そうな顔で雲がまばらな青空を見ながらつぶやいた。
青山里沙、17歳高校2年生、成績は上、両親と妹の4人暮らし。別に家庭が金銭的に困ってる訳ではないが社会勉強という理由で親から承諾をもらってバイトをしている。成績が落ちたら辞めるという約束で。
でも里沙はバイトが楽しかった。家から程近い場所にあるコンビニだけど、いろんなお客さんとの接客や自分で稼ぐお金の大切などを学んで少し大人になった、そんな気がしていた。
セミロングの髪で少し大人びた顔立ちは店の制服をきると女子高生とはとうてい思えないいで立ちだった。
学校からバスに乗り停留所を3つ過ぎた所で里沙は降りた。バス停向かいにバイト先のコンビニがある。
『お疲れ様です』
元気に挨拶をしながらコンビニに入った里沙は真っすぐ更衣室に向かった。
(今日も8時まで頑張ろ)
ロッカーの鏡で笑顔をチェックしながら里沙は手際よく着替えを済ませた。
里沙のバイトは週5日5~8時まで。門限の9時までには家に帰らなければならない。それでも好きなバイトができる限り不満はなかった。
(来年は受験かぁ…でもここは辞めたくないなぁ…あ、お客さん)
『いらっしゃいませ』
今日も里沙の笑顔が店内を明るい雰囲気にしていた。
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