第一夜

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  月は無く、     クロスした二つの天の川は   樹海を群青色に照らす。     一つは銀河の天の川、もう一つはアンドロメダの天の川。     すると視界の片隅に流れ星が…   いやあれは人工衛星だ。     人々の願いを集計して   年に一度、感謝祭の日に 一つだけ叶えさせてくれるという 衛星「ターキー」。       しかし願いなんてない。         「おい君!」   びくっとして振り向くと   なんだ…樹海の監視員か…         「君は何歳かね…」        僕は小さな声で答えた。 「…283歳です」       「若いねー 若い…    今月は君で18人目だよ」     そう言って立ち去った監視員はゆうに500歳を越えていそうな風貌だった。 なんだ…引き止める訳じゃないのか…       いつからだろう…この星が、   本来の寿命で死ぬという権利を無くしてしまったのは…       くそっ…       最後の煙草に火をつけようとしたその一瞬、   ライターの汚れた炎は辺りを オレンジ色に照らす。       なんだ、ここも人工か…       グラスファイバーの草と   エナメル質な樹木。       この星を駄目にした全てのキッカケはこの炎か。     いや、それとも、それを操ろうと決意した人間だろうか。         煙草に火を着け終えると、   この星に唯一残された清い光は   また樹海を群青色に照らした。         さてと… 死ぬとするか…    
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