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吉川孝太は、クラスでは目立たない生徒だったが、成績は拓海とほぼ同じだった。   しかし、孝太は拓海と違い、誰よりも他人に優しかった。   誰かが給食をこぼした時は、真っ先に雑巾で床を拭いていたり、誰かが筆箱を忘れた時は、自分もひとつしか持っていないのに、その生徒に消しゴムを貸してあげたりしていた。   しかし、そんな孝太は初め、拓海の考えたゲームの二人目に選ばれていた。   それは、拓海が選んだのではなく、クラスで成績の悪い男子達が、孝太に嫉妬して勝手にいじめをしていたのだった。   男子が勝手にいじめをしていることを、女子から聞いた拓海は、男子達を集め、こう言った。     「おい、お前ら。吉川みたいなメガネはほっといて、木村にしようぜ!!俺、あいつの顔見てると腹立つからさ!!」   「え!?あ、ああ…。そうだな…」     『拓海に逆らったら、自分がターゲットにされる』     このイメージが頭をよぎった男子は、すぐに孝太をいじめるのを止め、代わりに、隆志をいじめるけとにしたのだった。   拓海は、もちろん孝太もゲームの対象に入れていた。しかし、隆志の方が今は気にくわなく感じており、また、孝太に成績優秀者同士ということで、親近感を感じた故に、このような行動をしたのだった。
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