130人が本棚に入れています
本棚に追加
「重役出勤とは偉くなったもんだなぁ?」
オフィスに入り自分のデスクにつくと、隣から皮肉混じりの挨拶が飛んできた。
「うっせー。昨日は遅かったんだからこれくらい遅れて来るのは当然の権利だ。」
皮肉に対してテンションの低い声で返す。
俺は朝が弱い。
すでに昼を回っているがそこは気にしない。
イスに座り肘をついて隣を見ればソイツはクツクツと笑っている。
紹介が遅れたが、コイツは<エリカ・アーネルベルク>。
俺の仕事上の相棒だ。
長いブロンドの髪に空の様に透き通った蒼い瞳をしている。スタイルだって悪くない。
初対面のヤツならば間違い無く美人だと答えるだろう。
俺だって初めはそう思った。
しかし蓋を開けてみれば中身だけでなく口調まで男勝りと来たもんだ。
正直言って幻滅ですよ。
それでもチームを組んで早一年。慣れとは恐ろしい物です。
「今までのツケが回って来たんだ。諦めるこったね。」
表情を変えずに言ってくる。
そんな会話をしつつ俺の仕事は始まる。
その辺のヤツらと同じ。いつもと変わらない日常が。
ただ、他のヤツらと違う所があるとすれば、それはこの仕事だろう。
時空管理局。
多次元に存在する世界やそれを隔てる次元を管理し、法を破る者がいれば取り締まる。言わば警察のような物だ。
俺はそこの<公安部・特別捜査課・攻撃班>と言う部署に属している。
見て分かる様に公安の中でも荒事専門の部隊だ。
因みに階級だってちゃんとある。俺とエリカは3等空尉。略して3尉だ。
「そう言えば隊長が探してたぞ?」
エリカが、アッと言った後に思い出した様に言ってくる。
「隊長が?なんで?」
思い当たる節など…ある。ありすぎて見当もつかないので聞いてみた。
「そんなの知るわけ無いだろ。でも急ぎだったみたいだぞ?」
エリカが顎に指を当てて思い出しながら答える。
無駄にもんもんと考えていると天井のスピーカーから声が聞こえてきた。
「特捜課、霧島3尉。至急隊長室まで出頭せよ。繰り返す…。」
スピーカーから視線を下ろすとエリカが笑いを堪えながら「お呼び出しだぞ?」と言う目で見ていた。
「ハァ~。」
盛大な溜め息をひとつ。
俺は重い足を動かして隊長室へ向かって行った。
最初のコメントを投稿しよう!