いつもの朝

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だが、そこには"基本的に"と言う但し書きがつく。 便利な上に使える権限を使わないバカはいない。 それを使うのを渋ると言うことは… 「連中に言わせれば自分達は諜報員なんだそうだ。これだから情報課の連中は困る。顔がバレるのが嫌なら変装でもして行けばいいものを。」 アルフレッドが珍しく愚痴の様な言葉をこぼす。 「アイツら根暗ですから。仕方ないッスよ。」 こういう時に動かないでどうすんだと思うが、それなりにお世話になっているので強く言えないのが悲しい。 「だから今回は独自に動く。我々"特攻"がな。」 アルフレッドの眼が真っ直ぐに俺を見据えてくる。 戦闘が本業のような攻撃班を捜査の時点から動かすのは基本的に有り得ない。 生還率の最も低い部隊だからこそ、捜査などをせず訓練に多くの時間を割き少しでも生還率を上げようと言う考えのためだ。 その考えを切り捨て、捜査班を使わず攻撃班のみで全てをやると言っている。 「これは公安の事件でもあるが、深い部分で関わっている我々には他に譲れないものがある。」 アルフレッドにとっても配属した直後に起きた事件なため思うところがあるのだろう。 その眼には強い意志が見て取れる。 「この決定は公安部長の耳には入っていない。完全に私の独断によるものだ。そして私はお前が最も適任だと思っている。やってくれるか?霧島3尉。」 確認する必要も無いのに聞いてくるあたり、ホント律儀だなぁと思ってしまう。 「こんな事件を解決出来るのは俺を置いて他にはいませんよ?全力で当たらせてもらいますよ。」 それにダメと言われてもやるつもりだ。 「お前ならそう言ってくれると思ってた。宜しく頼む。」 急に立ち上がったと思ったら、アルフレッドは頭を下げた。 「ちょっと頭上げて下さいよ。そんな事されたら調子狂いますって。」 慌ててフォローする。 てか、これってフォロー? 「そうか。私も現場に出たいがそうもいかない。階級が上がるのは良いことだが上がり過ぎるのも困ったものだ。」 アルフレッドは頭を上げながらしみじみと言ってくる。 生憎と局入りしてから万年3尉の俺には分からない考えだね。 つーか微妙に嫌みに聞こえるのは気のせいかコノヤロー。
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